Q【「後遺症逸失利益」って何?】
半年ほど前に交通事故に遭い、先日、後遺症があるのかを判断するために、診断書を提出しました。後遺症があると、逸失利益というものがもらえると聞いたのですが、逸失利益とは何ですか。私は、交通事故に遭った頃、仕事をやめたばかりで、次の仕事を探しているところだったのですが、その場合にも逸失利益はもらえるのでしょうか。
A:弁護士からの回答
交通事故における逸失利益とは、交通事故がなければ得られたであろう、利益や収入のことです。
交通事故によって後遺症が生じてしまった場合、それまで行っていた仕事がこれまでどおりできなくなってしまったり、後遺症の程度などによっては仕事自体できなくなってしまうこともあります。
その場合に、加害者に対して、逸失利益を請求することができるわけです。
逸失利益の一般的な計算式は以下のとおりです。
逸失利益 =基礎収入(年収)×労働能力喪失率 ×中間利息控除係数
この計算式について簡単に説明します。
後遺症を負った場合、その程度に応じて労働能力が低下すると考えられます。そして、労働能力が低下すると、その分だけ収入が減ると考えられます。それが労働能力喪失率と呼ばれるものです。
たとえば、被害者の年収が500万円で、後遺症によって労働能力が35パーセント低下したとすると、1年間で175万円(=500万円×35パーセント)の収入が減ると考えられるわけです。
そして、被害者があと30年間働くことができる場合、1年間あたり175万円の収入が減るわけですから、175万円×30年=5250万円が逸失利益となる・・・となりそうですが、そうではありません。この場合、30年後までの損害(逸失利益)を現在に遡らせて請求することができるので、そのまま5250万円を請求できてしまうと、将来の利益を先取りできるという意味で得をしてしまうことになってしまいます。そこで、中間利息控除係数という数字を使ってその調整をするのです。ちなみに30年の場合の中間利息控除係数は、15.372(ライプニッツ係数)とされています。
よって、結論としては
2690万1000円(=500万円×35パーセント×15.372)が逸失利益となるわけです。
このように、逸失利益には計算式が存在しますので、そこに当てはめる数字さえはっきりすれば簡単に計算ができます。しかし、逸失利益は、実際にはどうなるかわからない将来の損害を現在に遡らせて請求するものですので、そこにはとても多くの問題が存在しています。
たとえば、後遺症が発生しても実際の収入が減らなかった場合にも逸失利益を請求できるのか、学生や専業主婦の基礎年収はどうやって計算するのか、同じような後遺症でも職業によって労働能力喪失率は変わるのか、将来的に後遺症がよくなる可能性を考えなくていいのか等々、、、いずれも悩ましい問題ばかりです。
さて、あなたのように、交通事故当時、求職中だった方の逸失利益をどのように考えるのか、というのも難しい問題です。「無職で収入がなかったのだから、逸失利益は存在しない」という考え方もあり得るところですが、交通事故がなければ普通に就職して収入を得ていたであろうと考えられるのであれば逸失利益を認めるという考え方が一般的です。
では、基礎収入の額はどうなるのでしょう?
一般的には、交通事故前の最後の就職先での収入や平均賃金を参考にして決められると言われています。ですが、実際には最後の就職先での給料がたまたま安かった場合や、収入が大幅に増える企業への就職が決まりかけていた場合など、個々人によっていろいろな事情があり、簡単に決められないことが多いでしょう。
このように、逸失利益をめぐってはさまざまな難しい問題があります。
くわしいことは弁護士に相談してみてください。